【第2回】 “ゲーム=悪”なのか!? ゲームとの関わり方を考える。

【第2回】 “ゲーム=悪”なのか!? ゲームとの関わり方を考える。


近年、クイズやくじ引き、ロールプレイングといったゲームの要素を取り入れることで学習効果を高める「ゲーミフィケーション」という仕組みへの注目が高まっています。
「ゲーミフィケーション」×教育の研究成果の蓄積も急速に増えつつあるなかで、勉強を楽しいものに変えるにはどうすればよいか、具体的にどう取り入れればいいのか。

その可能性について、第一線で研究をしている東京大学の藤本徹准教授にお話を伺いました。

本シリーズでは「ゲーミフィケーション」の考え方や活用方法、ゲームとの関わり方について、全10編の連載形式でお届けします。


藤本先生.jpg東京大学大学院 情報学環 准教授 藤本 徹(ふじもと とおる)先生
慶應義塾大学環境情報学部卒。民間企業等を経てペンシルバニア州立大学大学院教授システム学博士課程修了。博士(Ph.D.)。情報学環特任助教、大学総合教育研究センター助教、特任講師を経て、2019年より現職。専門は教授システム学、ゲーム学習論、オンライン教育。著書に「シリアスゲーム」(東京電機大学出版局)、「ゲームと教育・学習」(共編著・ミネルヴァ書房)、訳書に「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(早川書房)など。



楽しみながら学ぶ!ゲーミフィケーションの魅力とは。

“ゲーム=悪”なのか!? ゲームとの関わり方を考える。



“ゲーム=悪”なのか

第1回では「ゲーミフィケーション」の要素を学習に活用する手法をお伺いしました。

一方でゲームというと、「勉強ができなくなってしまう」、「依存してしまう」など、“ゲーム=悪”と思うイメージがある方も多いと思いますが、藤本先生のお考えを教えてください。

私は“ゲーム=悪”だとは全く思っていない立場です。かなり昔からゲームをより社会のために活かしていこうという取り組みもあります。

一方で、“ゲーム=悪”だと捉えられる理由もあります。多くの保護者の皆さんからすると、子どもがゲームにのめり込んでしまい、言うことを聞かなくなってしまうという状況を懸念されていますよね。確かに歴史的にも、双六にはまり過ぎて仕事をしなくなるお坊さんが増えて、双六を禁止する法律が出されたような話もあり、ゲーム的な遊びが社会にとってネガティブなものだという考えは古くからありました。

ギャンブルで生活を持ち崩すようなところまでのめり込み過ぎてしまう人がいることに対する社会的な拒否感やネガティブな気持ちが、“ゲーム=悪”というイメージの根底にある不安感だと思います。保護者の皆さんは子どもがゲームにはまって戻れなくなるのが心配という気持ちもあるのではないかと思います。

ゲームにのめり込む要因としては気質的な部分もありますが、環境的な影響もあります。例えば、友人関係や家庭環境などがあまりよくない状況で、ある種の救いの場としてゲームに気持ちが向かっていることも考えられます。ゲームが自分の「平和で楽しい空間」で、そこから一歩外れると苦しい問題に直面する環境の場合、ゲームへの依存心やのめり込む行動が起きやすくなります。つまり、子どもの全体的な“幸福感”とのバランスでゲームの位置付けが変わる側面があるので、一概に“ゲーム=悪”とするのではなく、子どもの周辺の環境をよく見たほうがいいと思います。

これは大人にも同じことが言えます。何かつらい状況にあって、そのときに依存しやすいものに出会ったときにのめり込んでしまいやすくなりますので、子どもたちだけの問題ではありません。

つまりその人を取り巻く環境の中で、ゲームがどういう位置づけにあるのかということが大きなポイントだと思います。


■納得いくルールを決めよう

香川県議会で成立し、2020年4月1日から施行された「18歳未満はゲーム1日60分まで」という条例もありますが、ゲームを制限することでゲームにはまり過ぎることは防げるのでしょうか。

それは難しいですね。制限したり、「やめなさい」と禁止したりすることで、さらにやりたくなる気持ちも生じます。また、我慢してやらないようにしていると、将来我慢しなくなってよくなった時に、さらにのめり込む可能性もあります。だから程よく満足するまでやりながら、納得のいくルールを本人と一緒に決めていくこと、社会生活の中でゲームが趣味としてちょうど良く位置づくようにサポートできるのが望ましいと思います。

 


■ゲームとのより良い関わり方とは

では、家庭ではゲームをどのように考えていけばよいのでしょうか。より良い関わり合い方を教えてください。

ゲームとのかかわり方については最近関心が高く、そういったテーマの取材や講演依頼を受ける機会が増えました。

基本的に大事にしてほしい原則は「ゲームをやらせっぱなしにしない」ことです。ゲームを対話の材料やコミュニケーションの媒介にすることで、子供たちの様子もわかりますし、「どんなゲームが好きなんだろう?」と見てみると、「あ、この子はこういうタイプのゲーム好きなんだ」と発見があったり、「なんでこういうのをやるのとか?こういうの好きなの?」というように会話の素材になったりします。そういった関わりをすることで、ゲームを通してその子の気質や向き不向き、好みがわかるのでおすすめです。

また、実際に保護者の方がゲームで遊んでみることもおすすめしたいです。ゲームをした上で共通の会話も生まれますし、ゲームの好みがわかれば、家庭でのルール作りの参考にもなります。「楽しいけど、このゲームはどこで切りよく止められるかな」と、一緒にルールを決める時に具体的な話ができるきっかけにもなります。

またゲームのタイプによって、身につく力や高まる能力が変わってくるので、いろんなタイプのゲームやってみるのもよいと思います。好きなゲームがパズルゲームであれば、たまにはシューティングゲームをやってみようとか、あの謎解きのアドベンチャーゲームをやってみようとか、違うタイプのゲームをやってみることで、気付くことや楽しさがいろんなところにあることがわかると思います。「どういうゲームがあるのだろうか」と次に遊ぶゲームを探してみることは、ゲームから得られるものの幅を広げられるのでおすすめですね。

ただ、保護者と子どもの関係にもよりますし、ゲームが好きか嫌いかということもあると思うので、ご自身に合うやり方を選ぶのがいいですね。テレビゲームじゃないとダメということではなく、将棋、オセロ、トランプ等でも良いですし、一緒に楽しみ、一緒に楽しんでルールを作るということが1つ大切だと思います。