【第3回】 子どもの学習意欲を高める、ゲームとの付き合い方とは?

【第3回】 子どもの学習意欲を高める、ゲームとの付き合い方とは?


近年、クイズやくじ引き、ロールプレイングといったゲームの要素を取り入れることで学習効果を高める「ゲーミフィケーション」という仕組みへの注目が高まっています。
「ゲーミフィケーション」×教育の研究成果の蓄積も急速に増えつつあるなかで、勉強を楽しいものに変えるにはどうすればよいか、具体的にどう取り入れればいいのか。

その可能性について、第一線で研究をしている東京大学の藤本徹准教授にお話を伺いました。

本シリーズでは「ゲーミフィケーション」の考え方や活用方法、ゲームとの関わり方について、全10編の連載形式でお届けします。


藤本先生.jpg東京大学大学院 情報学環 准教授 藤本 徹(ふじもと とおる)先生
慶應義塾大学環境情報学部卒。民間企業等を経てペンシルバニア州立大学大学院教授システム学博士課程修了。博士(Ph.D.)。情報学環特任助教、大学総合教育研究センター助教、特任講師を経て、2019年より現職。専門は教授システム学、ゲーム学習論、オンライン教育。著書に「シリアスゲーム」(東京電機大学出版局)、「ゲームと教育・学習」(共編著・ミネルヴァ書房)、訳書に「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(早川書房)など。



楽しみながら学ぶ!ゲーミフィケーションの魅力とは。

子どもの学習意欲を高める、ゲームとの付き合い方とは?



■子どもの状況にあわせたサポートをしよう

第2回では、“ゲーム=悪”と捉えるのではなく、子どもを取り巻く環境の中でゲームがどのような位置づけにあるのか理解し、対話の素材としても活用できるというお話をお伺いしました。

では、勉強するモチベーションを上げるために、「宿題が終わったらゲームをやっていいよ。」というような、ゲームを報酬とした学習の動機付けは学習意欲に影響を及ぼすことはあるのでしょうか?

それは大いにあると思います。しかし、どのようなものを報酬にすると効くのか、どのような順番だと効くのかというのは、子どもによって個人差があります。ゲームを先にやったら宿題をやる、宿題を先にやったらゲームをやるなど、それで勉強が進むのであればその方が良いです。

動機付けの理論の話として、アンダーマイニング効果と呼ばれるものがあります。せっかくやる気になっているのに、ご褒美をあげると逆にやる気がなくなり、ご褒美をあげないと勉強をしなくなったというような話を聞いた方も多いと思います。そういう話はわかりやすいので、「じゃあ報酬は悪いんだね」というような結論になりやすいですが、ゲームやお小遣いといったご褒美での外発的動機付け自体が悪いという意味ではありません。

基本的にやる気があるのであれば、余計なご褒美はあげなくて良いですが、ご褒美があった方が勉強が進む人もいます。また、勉強をやる気になっているけれども、よりレベルアップするためのサポートが必要だが、そうしたサポートが届いていない人もいるわけです。だから、どの段階でどのような動機付けのサポートが必要かというのは、そんなに単純な話ではなく、子どもの状況に合わせて考える必要があります。


■そのとき必要な”報酬”を

外発的な動機付けについては、いろいろな評価があると思います。報酬を与えないほうが良いということも言われることがありますよね。1分でも勉強をさせたくて、お小遣いを上げたり、何かを買ってあげたりする方もいらっしゃるかと思いますが、外発的報酬を誘引するような報酬がいつも出てくるような環境にいる場合には、内発的動機は下がってしまうものなのでしょうか。

報酬が出てくることが当たり前な状態になると、報酬が出てこないことで逆にやる気が下がるということが、外的報酬の悪影響として理解されています。例えば、テストで良い点を取ったらプレゼントがもらえていたのに、突然もらえなくなってしまえば、せっかくやったのに損したという気分になってしまいます。自分のやったことが認められないということになり、「じゃあ、やっても意味ないな」という思考につながります。

報酬をルーチンとして、当たり前にあげてしまうとマンネリ化してしまい、報酬の意味がなくなります。だから、報酬はその時々で必要なものを、「何が効くかな」と考えたり、タイミングを考えたりしてあげないと報酬としては機能しません。大人でもお給料がなんの理由もなく下がると、モチベーションが下がりますよね。

 


■子どもの学習意欲を継続させるには

子どもたちのモチベーションを下げない効果的な報酬や、さらに学習意欲を継続してもらうためにはどういったことをすればよいでしょうか。

効果的な報酬を与えるには、その子にどういったことが有効かということをきちんと観察したり、子どもと話をしたりして状況把握することが大切です。保護者が勝手に目標や報酬を設定するのではなく、子どもと相談しながら目標設定をして、子どもの目指したいものやどういったものが報酬となりうるのかを調整し、お互いが納得できるものを設定しないとうまく報酬が機能しないと思います。

また、全てやり終えて時間が経ってから達成したかどうかを評価するのではなく、細かくフィードバックできるようなルール設定やコミュニケーションの機会を作ることが重要です。人との関わりというのはかなり強いフィードバックになります。その大事なフィードバックの出し手としての大きな存在は、やはり保護者の方や周りの身近な人です。報酬やルール設定が押し付けになると自発的な参加が実現しにくくなってしまいます。

さらに学習意欲を継続させるためには、保護者の方の励ましの声かけや、保護者の方自身も「何かに取り組んで頑張ってるよ」という姿をみせるのも良い関わり方だと思います。2人でそれぞれのゴールを決めて、さらにそのプロセスやルールも一緒に決めて取り組み、お互いにフィードバックするというのもよいと思います。2人で頑張れるような関係で取り組めるといいですよね。

外発的動機付け:学習の内容とは関係のないこと(ゲームやお小遣い、プレゼント等)を目的にしている状態
内発的動機付け:学習内容そのものに興味を持っている状態
https://learn-tern.com/self-determination-theory/