【第4回】 非認知能力は子どもの姿や行動の見取りから ~後編~
2022.2.1
岡山大学全学教育・学生支援機構 准教授(教育方法学)中山芳一(なかやまよしかず)先生
1976年1月、岡山県岡山市生まれ、現在45歳で3児の父親。岡山大学教育学部卒業後、当時は岡山県内に男性一人といわれた学童保育指導員として9年間在職。学童保育の研究が将来的な学童保育の充実に必要不可欠と確信し、教育方法学研究の道へ方向転換した。現在は、岡山大学全学教育・学生支援機構 准教授として学生たちのキャリア教育や課外活動支援を担当するとともに、全学生必修の初年次キャリア教育の主担当教員も務める。そして、20年以上に及ぶ小学生と大学生の教育経験から、「非認知能力の育成」という共通点を見出し、全国各地で非認知能力の育成を中心とした教育実践の在り方を提唱している。現在、幼児教育や小中高校の教員、一般の児童・生徒や保護者を対象とした講演会の回数は年間250件を超える。
これまでの主な著書
・『東大メンタル―「ドラゴン桜」に学ぶやりたくないことでも結果を出す技術』 (2021年、日経BP)
・『大学生のための教科書』 (2020年、東京書籍)
・『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』 (2020年、東京書籍)
・『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』 (2018年、東京書籍)
・『新しい時代の学童保育実践』 (2017年、かもがわ出版)
・『コミュニケーション実践入門』 (2015年、かもがわ出版)
家庭で伸ばそう!
学力テストで測れない非認知能力!!
非認知能力は子どもの姿や行動の見取りから ~後編~
■見取るためにはレンズを使おう!
ただし、子どもたちのプロセスを見取るといっても、プロセスは結果と違って見えにくいしわかりにくいのです。だから、私たちはついついわが子に「がんばったね!」とざっくりとした声をかけてしまいます。ところが、子どもからすれば「いつ、何を、どのようにがんばったのか」がわからなければ、目標でもある意識づけにはつながりません。難しいですよね…。
そこで、おススメなのが「レンズ」を使うことです。例えば、先ほども紹介した3つの非認知能力レンズを使ってみませんか? わが子が何かに向かって取り組んでいるとします。その時々で…
【自分と向き合う力】しんどいことでも粘り強く取り組んでいる姿は? …など
【自分を高める力】 いまやっていることをよりよくしようとしている姿は? …など
【他者とつながる力】友だちと教え合ったり励まし合ったりしている姿は? …など
といったレンズによってお子さんの取り組みのプロセスを見取ってあげてみてください。すると、「がんばったね!」ではぼんやりとして見取ることのできなかったわが子のステキな姿や行動を、解像度高く見取ることができるようになるはずです。
それでは、今回はある保護者(お母さん)のエピソードを紹介して締めくくりたいと思います。その保護者の方は、受験生だったわが子が12月25日のクリスマスの日にも勉強していて、途中で壁にぶつかったことから机の上のプリントを床にばらまいている様子に気づきました。しかし、その子はしばらくして苛立ちを抑えて「クッソー!受かってやる!絶対受かってやる!」とつぶやきながら、ばらまいたプリントを拾い集め、再び勉強し始める姿を見取っていました。このお母さんは、この出来事をその子が無事に合格した日に満を持したように話し始めます。そして最後に、「お母さんは、あなたが合格したこと以上に、あのクリスマスの日にあなたがあきらめなかったことの方がうれしかったんだよ!」と付け加えたのです。現在、この子はすでに社会人になっています。彼は、いまでもあのときの母親の言葉が忘れられず、仕事でしんどいことや投げ出したいことがあっても、「自分はあきらめない」という意識を働かせることができているのだと私に教えてくれたのです。