【第1回】本を通して世界に出会おう ー中欧文学者編 青春と恋愛ー

【第1回】本を通して世界に出会おう ー中欧文学者編 青春と恋愛ー


突然ですが「読むこと」の歴史を知っていますか?
文字が生まれたのはなんと5000年以上も前(紀元前3000年)。現在の西アジアで生まれました。皆さんもどこかで聞いたことがある、楔形文字やヒエログリフなどはイメージしやすいかもしれません。

そしてこの発明は人類に大きな衝撃を与えます。これまで残すことができなかった軌跡を記録できるようになり、場所や時を超えて知恵や物語が共有されるようになったのです。

情報の溢れる現代においても「読むこと」は、「あ!」と驚く世界に私たちを連れて行ってくれます。

「読むこと」は自分の知らない世界へ一歩踏み出すチャンスです!そして先人の悩みも発見も知恵をも時空を超えて得ることができるでしょう。

本連載では様々な分野で活躍する人たちの ”中高生にいま読んでほしい本” を紹介します!

多くの出会いがありますように。


須藤輝彦.jpg東京大学大学院博士課程在籍 須藤 輝彦(すどう てるひこ) 
東京大学大学院博士課程在籍。中欧文学者。ミラン・クンデラを中心に、チェコと中欧の文学を研究する。論文に「偶然性と運命」、Web連載に「燃えるノートルダム」、短篇小説に「中二階の風景」など。
訳書に『シブヤで目覚めて』、『美術館って、おもしろい!』。



青春と恋愛

青春や若さは、いつも特有の喜びと、特有の悩みをともに引き連れてやってきます。恋愛も、青春を生きる人間にとっては切っても切れない問題のひとつでしょう小説は、そういうものを自然なかたちで読み手に伝え、感じさせ、考えさせる最良の形式のひとつだと思います。



◯ J.D.サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(野崎孝訳、白水Uブックス、1984年)

カテゴリー:文学(小説)

 学校がイヤで飛びだした16歳の少年ホールデンが、ニューヨークの街をさまよい歩く。繊細かつユーモラスな語りによって、時代を超えて若者の心を捉え続けた伝説の小説。選者は14歳でこれを読み、人生が変わりました。遠くの国の物語なのに、そこにはだれよりも自分を理解し、語りかけてくれる友だちがいる。個人的にはこちらの野崎訳のほうが味があって好きですが、ちょっと違うなと思ったら、負けじと村上春樹の訳を手に取ってみてください。世界をあなたに繋がるものとして、もう少し、身近に感じられるかもしれません。

『ライ麦畑でつかまえて』J.D.サリンジャー, 野崎孝訳, 1984, 白水Uブックス『ライ麦畑でつかまえて』
 野崎孝訳, 1984, 白水Uブックス
 www.amazon.co.jp/dp/4560070512






◯ ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』(野崎歓訳、光文社古典新訳文庫、2011年)

カテゴリー:文学(小説)

 最近ではミシェル・ゴンドリーによって映画化もされている、パリを舞台とした美しくも切ない物語。「現代のもっとも悲痛な恋愛小説」とも呼ばれるように、恋愛の極限のかたちを描いた作品であることは間違いないですが、もちろんそれだけではありません。幻想的な世界観とSF的な想像力で他の追随を許さない本作の一番の魅力は、遊び心に溢れた、魔法のようなヴィアンの文章にあります。ひとつ、選者お気に入りの一節を引用しましょう。「太陽光線がクロエの目を刺しそうになったので、彼はその端を力いっぱい折り曲げた。光線はぐにゃりと曲がって部屋の家具の上をさまよい出した。」米津玄師の「肺に睡蓮、遠くのサイレン」(「感電」)という歌詞も、この小説に由来しています。

『うたかたの日々』ヴィアン, 野崎歓訳, 2011, 光文社古典新訳文庫『うたかたの日々』
 ボリス・ヴィアン, 野崎歓訳, 2011, 光文社古典新訳文庫
 www.amazon.co.jp/dp/4334752209






◯ 宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社、2020年)

カテゴリー:文学(小説)

 教科書に出てこなさそうなもの、という縛りを(勝手に)設けて書きはじめたこのおすすめリストですが、本作/本作家は今後、きっと国語の教科書に掲載されることでしょう。SNSでの「炎上」という現代的で俗っぽいテーマを扱いながらも、人間の深いところを描く作者の力量は確かなもの。現代日本における「恋愛」のあり方を、鋭敏に写しとった本作。大人になったあなたにも、10代のあなたにも、きっと刺さるものがあるのではないでしょうか。第164回芥川賞受賞作。

『推し、燃ゆ』宇佐見りん, 2020, 河出書房新社『推し、燃ゆ』
 宇佐見りん, 2020, 河出書房新社
 www.amazon.co.jp/dp/B08HGQXTKY




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