いざ学問選択! 【1.文化を味わう】

いざ学問選択! 【1.文化を味わう】

【文化を味わう ―時を越え、国を越えて人の営みを見つめる―】

「文化」と聞くと、平安時代やルネサンス期の文化など、どことなく高貴で自分とは縁遠い印象をもつかもしれない。しかし、実際は私たちにとって非常に身近なものだ。

たとえば、メッセージのやりとりで使う顔文字。文章だけでは表せない感情を、文字で顔を作りビジュアルで表現するものだが、日本とアメリカで種類や形も違うし、人によって受け取る意味も異なる言葉の文化だ。また、日本でも体調が悪い状態を指す言葉は「しんどい」「だるい」「えらい」「こわい」「きつい」など地域によって異なる。所変われば品変わるというように、言葉も文化も場所や人によってさまざまだ。

文化を表す「culture」は、ラテン語の「colere(耕す)」が語源だ。土を耕し作物を育てることで、人々は食の豊かさを享受してきた。一方、文化も私たちの心をより豊かにしてくれるもので、言い換えれば「人々が心を耕し育んできたもの」といえる。大学では、こうした文化を扱う学問を「人文科学」といい、時を越え、国を越えて人の営みについて考えていく。人文科学にはどんな学問があるのか見ていこう。



【文学】

何を学ぶの?

●文学を通じて人間の本質を探る

 詩や小説、演劇や映画の脚本、マンガなど、人々が創り上げてきた言葉の文化。文学は、こうした作品を読み、人間の本質を探っていく。作品をどう解釈するか、作者が伝えたかったメッセージは何か、その時代の社会背景や歴史、作品に使われている表現の意味や文法などを研究する。

 日本文学系では、高校で学ぶ『源氏物語』などの古典文学から夏目漱石や三島由紀夫の小説といった近現代文学まで、さまざまな時代の作品を学ぶ。和歌や俳句、歌詞やアニメ作品について研究することもあり、扱うジャンルは幅広い。

 外国文学系では、英米文学、ドイツ文学、フランス文学や中国文学などが研究されている。いずれも作品をその国の言葉で理解するための語学力も身につけていく。

大学選び ココがポイント

 文学は研究対象が幅広く、作品へのアプローチ方法も多岐にわたるため、大学によって特色がある。とくに外国文学系では、英米文学を学べる大学は多いが、その他の地域の文学は学べる大学が限られる。教授の専門分野やカリキュラムが自分の興味・関心のある分野と合っているかを確認しておこう。



【外国語学】

何を学ぶの?

●語学力を基礎に「真の国際人」をめざす

 コミュニケーションに必要な言葉を学び、それが使われている国や地域の歴史・文化、政治・経済などへの理解を深めていく。単に語学力を磨くだけではなく、その国や地域に関するさまざまなことがらを理解し、異文化理解・多文化共生をめざす学問だ。
また、日本語を一つの言語としてとらえて研究する「日本語学」もある。国際化に伴い、外国人に日本語を教える日本語教員養成のカリキュラムを設ける大学も増えている。

大学選び ココがポイント

 大学に設置されている学科としては英語が多く、中国語、スペイン語、ドイツ語、フランス語などが続く。外国語学部のほか、文学部や国際教養学部などでも学べるが、大学・学部によって言語の習得に重点を置いているのか、地域研究に重点を置いているのかが異なるので、大学案内などで確認しておこう。また、留学を希望するなら大学の留学制度や費用も調べてみよう。

似たもの比較 ~外国語学と外国文学~

 外国語学は、専攻する言語の習得を目的としており、文法・語源など言語の形成過程、言語圏の文化や歴史について学ぶ。一方、外国文学は、文学作品を通して作品の内容から著者の思想、作品が生み出された時代背景まで、作品に関するさまざまなことを研究する。作品を読むにあたって語学力が必要になるが、あくまで研究のメインは文学となる。
 グローバル化に伴ってどの大学でも言語の習得に力を入れているため、この2つの学問の垣根は低くなりつつある。どちらもそれぞれの国の言語や文化は学べるが、研究の対象が異なるので注意が必要だ。



【史・地理学】

何を学ぶの?

●時間と空間を軸に人間の営みを探究

 史・地理学は、特定の時代や地域における人間の営みを探究し、これからの人間社会のあり方やまちづくりを考える学問だ。
 史学では、古文書や遺跡・文化財といった史料に基づき、過去の人間社会や人々の暮らしを明らかにする。「日本史」「東洋史」「西洋史」の3つの地域に分かれ、政治・経済・文化などの切り口から研究する。最近では、地域や国家間の関係性に注目し、包括的に歴史をとらえるグローバルヒストリーという試みもある。史料の分析が不可欠なため、対象の時代、国や地域における語学力も要求される。
 一方、地理学は地形や産業が人間の営みに与える影響やそこから生まれる地域的特性を考察する学問で、大きく3つの分野に分けられる。「人文地理学」は歴史や文化、政治・経済の視点から地域の特色を研究し、「自然地理学」は地形や気候が人間の生活や産業に与える影響を研究し、「地誌学」は地域ごとの文化や産業などを総合的に研究する。科目には測量学や製図学、地理情報システムなど理系の要素が強いものも多く、フィールドワーク(実地調査)も行う。

大学選び ココがポイント

 史・地理学は、文学部などの文系学部で学べる。自然地理学は理系学部で開講されていることも多い。大学や教授によって研究分野が異なるので、大学案内等で確認しておこう。



【文化学】

何を学ぶの?

●「文化」を多角的に研究

 言語、思想、宗教、生活、歴史、芸術、メディアなど、人間が作り上げてきた文化は国や地域によってもさまざまだ。こうした多様性を持つ文化を総合的に研究していくのが文化学だ。
 学科としては、特定の国・地域や文化圏を中心に扱う地域文化系、異なった地域や文化を比較する比較文化系などがある。また、ボーダーレス時代の到来により語学力・コミュニケーション力を備えた人材を育成する国際文化系の学科が増えている。

大学選び ココがポイント

 研究領域が幅広いため、学べる学部・学科も多種多様。語学系を中心にカリキュラムを組んでいる大学もあれば、人文・社会科学系の科目を中心にカリキュラムを組んでいる大学もある。どういう視点から学んでいきたいのかを明確にし、希望にあう大学を探してみよう。



【芸術学】

何を学ぶの?

●美を追究し、創造する

 音、形、言葉など、人間が創り出す芸術的表現について、理論や技術、歴史を学ぶのが芸術学だ。制作や演奏を中心に学ぶ実技系と、学問として芸術の本質を研究する理論系に分かれる。
 実技系では、美術・音楽・デザインなど、分野ごとにいろいろな学科・コースが設置されている。美術分野では、絵画・彫刻などについて理論と表現手法を学び、制作に取り組む。音楽分野では、声楽・器楽などの個人レッスンやアンサンブル練習をメインに、音楽理論の講義などが組み込まれている。デザイン分野では、グラフィック、ファッション、プロダクト、建築、空間などのコースが開設されている。そのほか、文芸・演劇・舞台美術・写真・映像などの表現技術を使って制作する分野もある。
 理論系では、美学・美術史、音楽学など、芸術一般として理論を中心に学ぶ。芸術大の理論系学科では、基礎的な実技も学べるところが多い。

大学選び ココがポイント

 芸術系学部では専門分野を細分化している大学がほとんど。まずは自分が学びたい分野のコースや専攻を設置している大学を調べてみよう。入学の段階でコース・専攻ごとに募集する大学が多く、定員枠も小さいところが多いので注意が必要だ。
 デザイン学はデザイン工学科など工学系の学科でも学べる。また、美学・美術史は文学部などで学べるケースが多い。



© 河合塾 全国進学情報センター 『2021 大学受験入門誌 栄冠めざして Junior』 2021年


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