いざ学問選択! 【2.人間を知りたい】

いざ学問選択! 【2.人間を知りたい】

【人間を知りたい ―人間にとって「人間追究」は永遠のテーマ―】

「人間とは何か」という問いにはどんな答えがあるだろうか。言葉を話す生き物、知識を伝える生き物、喜怒哀楽をもった生き物などいろいろ考えられるだろう。
17世紀フランスの思想家・パスカルは、人間について次のように語っている。「人間は一本の葦にすぎない。自然のなかで最も弱いもののひとつである。しかしそれは、考える葦なのだ。」人間は風になびく葦のように、自然の前では無力な存在だ。だが、考えることができる点で人間は偉大だと言える。
 大学では、考える・話す・信じる・思う・教えるなど、人間のさまざまな活動に注目し「人間とは何か」について考えていく。人々の心に漠然とした不安や影が見え隠れするなか、人間と科学技術との関係、人と宗教との関係、人と人とのつながりや絆、次世代の育成などが大きなテーマとしてクローズアップされている。私たちはどう生きていけばよいのか、先人たちの知恵から学んでいこう。



【哲・宗教学】

何を学ぶの?

●「生きること」の根源について考える

 「自分とは何か」「存在とは何か」といった、昔も今も変わらない普遍的な「問い」を探究していくのがこの学問だ。人類と地球との共生の問題や頻発する国際紛争、体外受精・出生前診断や脳死・臓器移植といった生命倫理の問題など、現在でもさまざまな場面で哲学的な考え方が要求されている。
哲学はヨーロッパの思想を研究する西洋哲学、インドや中国の思想を中心とする東洋哲学など、対象とする地域ごとに分かれている。授業では原書を扱うこともあるので、それを読みこなす力が必要となる。英語やドイツ語のほか、古代ギリシャ語、ラテン語、サンスクリット語などの古典語の学習が必要になる場合もある。
 宗教学では、人間にとっての宗教の意義や「拝む」といった宗教的行為の意味、歴史的な変遷、社会に与えた影響について研究するほか、仏教、キリスト教、イスラーム教など特定の宗教やその教義の研究に重点を置くところもある。

大学選び ココがポイント

 哲学、宗教学は文学部や人文学部の哲学科で学ぶことができる。人文学科や文化学科のなかに専攻として設置されているところも多い。
 個別の宗教については、神学部、仏教学部または文学部のなかの宗教別に分かれた各学科で詳しく学ぶことができる。



【心理学】

何を学ぶの?

●心の動きを科学的に研究

 「あの人は何を考えているのか」「彼はなぜあんな行動をとったのか」など、人間の行動や心の動きを科学的に分析し、心の法則性を導き出すのが心理学だ。人間の情報処理過程を解明する認知心理学、成長に伴う心の変化を研究する発達心理学などの「基礎心理学」と、犯罪心理学、産業心理学、教育心理学、カウンセリングや精神分析といった技法を用いる臨床心理学などの「応用心理学」がある。
 心理学は実験・観察という実証的な研究方法が特徴だ。大学では各種調査法・検査法の実験や実習を行い、その意義や実施上の問題点などを学ぶ。得られたデータをコンピュータで分析、統計化するための実習もあり、数学的な要素も強い。

大学選び ココがポイント

 心理学は心理学部のほか、文学部・人文学部・人間学部・福祉系学部にある心理学科、人間発達学科、コミュニケーション学科などで学べる。教育学部にも教育心理学、発達心理学などの学科・コースが設置されている。
 臨床心理士や公認心理師(→71ページ)の受験資格取得には、指定された科目を修了できる大学院への進学が必要になる。特に公認心理師は新しい国家資格であるため、めざす大学や大学院のカリキュラムが受験資格に対応するかどうか、よく確認してみよう。



【教育学・教員養成系】

何を学ぶの?

●教育の本質を学ぶ教育学と教師をめざす教員養成系

 教育系は、教育学と教員養成系の大きく2つに分けられる。
教育学は、「教育」を学問として研究する。教員養成を直接の目的とせず、教育の本質や目的、人間形成とのかかわりについて追究していく。哲学や心理学、歴史学、法学、経営学などともかかわりの深い総合科学といえる。
教員養成系学部の「教員養成課程」は、教員免許の取得が卒業要件となっている。1・2年次に教養科目や教育の基礎を学び、3年次以降に子どもの発達過程や免許を取得する教科の指導法など、教師に必要な知識や技術を修得する。教育実習は3年次以降に行われることが多いが、最近は教育実習関連科目として1年次から実習や支援を行う大学も増えている。
 一方、教員養成系学部の中には、教員免許の取得を義務づけず、幅広い教養をもつ人材の育成を目的とする「総合科学課程」もあり、国際・地域・芸術・スポーツなどの専攻・コースで、学際的な研究が展開されている。近年、総合科学課程は縮小傾向にあるが、教員をサポートする人材の養成を目的とした課程ができるなど、新たな動きもみられる。

大学選び ココがポイント

 教育学は文学部や教育学部で研究できる。専攻・コースとして設置されている大学も多い。教員免許を取得したい場合は、教職のための単位を別途取得すれば中学・高校の教員免許を取ることができる。
教員養成系の教育学部は国立大に多く設置されているが、近年では私立大でも増えている。教員採用数は県や市など各自治体によって異なるので、自分が働きたい地域の採用数や志望大学の採用実績にも目を配っておこう。



【児童学】

何を学ぶの?

●子どもの成長と発達を学ぶ

 児童学は、幼児や児童の成長や発達をさまざまな角度から学び、保育や教育に役立てることをめざす。「発達・心理」「教育・保育」「福祉」「保健」「文化」の5つを柱に、子どもたちを取り巻く環境への理解を深める。
 大学では主要分野の基礎を学び、専攻に応じた科目を学んでいく。実際に子どもと触れ合う幼稚園や保育園での実習や、音楽・造形などの演習もカリキュラムに組み込まれており、幼稚園教諭、保育士、小学校教諭の免許・資格を取得することができる。

大学選び ココがポイント

 児童学の多くは、家政学部や生活科学部のほか、文学部や教員養成系学部にある幼稚園教諭・幼児教育などの課程や、「子ども」と名のつく学部・学科で学ぶことができる。幼稚園教諭、保育士、小学校教諭をめざす人は、大学により取得できる免許・資格が異なるので必ず調べておこう。



【人間科学】

何を学ぶの?

●「人間」を総合的に研究

 多様な側面を持つ人間を、既存の枠組みにとらわれず、さまざまな角度から総合的・科学的に研究する学問が人間科学だ。
人間を研究対象とするため、研究テーマも手法もさまざま。心理学、社会学、教育学を中心に、哲学、文化学、生物学、生命科学、健康科学など多岐にわたる。人間科学は多様な学問が結びついてできたため、学際色が強く、人間への関心とバランスの取れた知識・感性、幅広い視野が必要とされる。
 大学では、「人間」について、何をどのように研究するかによって、専攻や講座が分かれている。学際的分野という人間科学の性質から、どの専攻に進んでも他専攻の授業を履修できるように柔軟なカリキュラムとなっているところが多い。

大学選び ココがポイント

 人間科学は人間科学科、人間関係学科、人間環境学科、行動科学科などで学べる。近年誕生した学科が多く、大学によって扱う問題のテーマや手法もさまざまだ。大学案内などをよく読んで各大学の特徴を押さえておこう。

講義紹介-人間科学特殊(社会的認知の心理学)-

 人間は対人関係や集団を形成し、相互作用しながら生活しており、「社会的動物」とたとえられる。そのため、状況を理解し、自己や他者の思考・意図・感情を推測することは、社会生活や対人相互作用の基盤となる。社会的認知(social cognition)とは、人間が、他者や自分自身について理解し、意味を見出す過程を指す。この講義では、社会的認知がいつ、何に対して、どのように行われるのか、また対人相互作用にどのような影響をもたらしうるのかを検討する。社会心理学における実験研究の知見を主軸とし、認知心理学、神経科学などの近接領域の知見も交えて議論を進める。
(慶應義塾大文学部人間科学専攻)



© 河合塾 全国進学情報センター 『2021 大学受験入門誌 栄冠めざして Junior』 2021年


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