いざ学問選択! 【3.社会の仕組みを考える】

いざ学問選択! 【3.社会の仕組みを考える】

【社会の仕組みを考える ―社会が抱える問題に多様な視点で取り組む―】

人間が集まって構成している「社会」。私たちが暮らす現代社会では日々さまざまな変化や問題が起きている。
 インターネットを例に考えてみよう。個人が閲覧した情報を自動的に記録し、それを利用して商品購入に繋げようとする「行動ターゲティング広告」を目にしたことのある人も多いだろう。広告効果を高める手法として注目されているが、プライバシー保護との関係が問題となっている。また、SNSの利用が広まったことにより、誰とでも気軽に連絡を取れるようになった一方で、友達とトラブルになったり、知らない人から突然メッセージが送られてきたりする問題も起きている。さらに、SNS上での発言から炎上するケースや大規模なデモに発展するケースもあり、現代社会は激動の時代といえる。
 社会で起こるこうした出来事を分析し、社会のルールや仕組みについて考えていく学問を大学では「社会科学」という。高校までの科目でいうと公民に近く、課題の解決策を探っていくという意味で実学的要素の強い学問分野だ。社会科学系にはどんな学問があるのか見ていこう。



【社会学】

何を学ぶの?

●社会で起こる諸現象を調査・分析

 社会学は、社会で生じる諸現象を調査・分析する学問だ。家族・若者・ジェンダー・メディア・文化・教育・地域など研究テーマはとても幅広く、研究の視点もさまざまであり学際性の強い学問といえる。
 社会学では現場が重視されるため、フィールドワークなどの社会調査を行う。聞き取りやアンケート調査によりデータを収集し、仮説を立ててその裏付けとなる統計分析などを通じて、人々の意識を探っていく。
 最近注目されているテーマに、メディア学や観光学がある。情報技術の発達により、ブログやSNSなどを通じて今や誰もが情報発信できる時代となった。こうしたメディア(情報伝達の媒体)の変化が人々のつながりにどのような影響を与えたのかを考察したり、溢れる情報を取捨選択し読み解いていく力や発信する力を身につけたりするのがメディア学だ。観光学は、経済成長の起爆剤として注目される観光産業、観光開発に焦点をあて、地域文化や地域経済、行政政策までを幅広く研究する。地域活性化に深くかかわる領域で、現場の知識を大切にするため実務経験者による講義もある。

大学選び ココがポイント

 社会学系の学部・学科は、その研究対象の広さから専攻・コース制を設けている大学がほとんど。実際にどんなことが研究対象とされているか、在籍する教授の専門分野は何かを大学案内などで調べておこう。



【社会福祉学】

何を学ぶの?

●豊かな福祉社会の実現をめざして

 社会福祉学は、社会全体の幸せとは何か、その実現のためにはどんな仕組みが必要かを考えていく学問だ。
 社会福祉には高齢者や障がい者への支援から、育児支援や生活困窮者への支援なども含まれる。社会福祉学の役割は、広く人々の生活にかかわる問題を発見・分析し、具体的な解決指針を提示することだといえる。これからの日本社会を支えるうえで必要不可欠な学問分野となる。
 大学では、介護や援助といった実践的な内容だけでなく、その背景にある理論や法制度のあり方についても学んでいく。理論分野には、社会福祉とは何かについて学ぶ社会福祉原論、福祉に関する法制度について学ぶ社会福祉法制、生活保護の意義や仕組みとその運用について考える公的扶助論などがある。
 実践面については、援助サービスの方法や技術を修得するソーシャルワークやカウンセリング実習、介護実習などの科目がある。

大学選び ココがポイント

 社会福祉学に関する学部・学科は私立大学を中心に多くの大学に設置されており、大学によって理論と実践の重点の置き方が異なったり、地域社会とのかかわりを重視したりといった特徴がある。
 福祉に従事するための資格は「社会福祉士」「介護福祉士」「精神保健福祉士」などがある。資格取得をめざす人はそれぞれの大学で取得可能な資格を確認しておこう。



【国際関係学】

何を学ぶの?

●あらゆる角度から国際社会を分析

 グローバル化が進むなか、世界の国や地域ではさまざまな問題が起きている。国際テロや難民問題、民族紛争、社会全体の経済格差、地球温暖化など一国だけでは解決できない複雑な因果関係を持つ問題が発生している。国際関係学は、こうした国境を越える地球規模の問題に、政治・経済、法律、歴史、言語、文化などの多角的な視点で、よりよい解決策を探っていく。現地を訪れる海外研修、留学も盛んに行われており、語学力や異文化コミュニケーション能力も養うことができる。

大学選び ココがポイント

 国際関係学は主に社会科学・人文科学の2つの視点から研究していくため、法学部、国際関係学部、国際文化学部や外国語学部で学べる。自分がどのような視点から学んでいきたいのかを考えて学部を選んでいこう。さまざまな留学制度・支援を用意している大学が多く、1年間の留学を必須としている場合もあるので、費用なども調べておきたい。



【法学】

何を学ぶの?

●社会生活で必要なルールや規範を学ぶ

 人間は一人では生きられない。他者とかかわりながら社会生活を営んでいくためには、一定のルールや規範が必要だ。こうした社会のルールについて学ぶのが法学だ。法律家になるための学問と思われがちだが、法学を学ぶことで身につけられる法的なものの見方(リーガルマインド)は、一般社会でも必要性が増している。
 法学では、憲法・民法・刑法などの六法を中心に、現実社会で生じる問題に対し法律をどう解釈・適用し解決を図っていくかを学ぶ。また、法哲学や法制史など、法の理論や歴史についても学ぶ。
 情報技術が飛躍的に発展するなか、フェイクニュースや個人情報の漏洩などインターネットをめぐる問題が頻発しているため、情報化社会の問題を法的に考える情報法分野の重要性が増している。また、コンプライアンス(法令遵守)の時代において、企業経営での法律知識の重要度も高まっている。国内にとどまらず、環境問題や難民、貿易など国をまたぐ法的問題に対応するルールの制定も求められており、法に課せられている使命は大きい。

大学選び ココがポイント

 法学を学べる学部・学科は多くの国公立大・私立大に設置されている。また、経済学部や経営学部でも経済法・経営法学科などで学ぶことができる。
法曹(裁判官・弁護士・検察官)をめざしている人は、法科大学院(→73ページ)への進学を視野に入れた大学選びをしよう。



【政治・政策学】

何を学ぶの?

●社会の問題を明らかにし、解決策を探る

 政治学は、社会で発生する対立や利害関係を調整し、よりよい社会秩序の形成をめざす学問だ。政治思想や政治哲学などの理論分野を学び、政府や地域の統治の仕組みや、紛争や貿易摩擦といった国家間・地域間の問題など、さまざまな政治現象を分析・研究する。
 現代社会のあらゆる問題・課題を多様な視点から考え、解決するための政策を立案し効果を分析する政策学も注目されている。政府や地方自治体の政策を学ぶ「公共政策」、まちづくりに関する政策を学ぶ「都市政策」、温暖化や資源・エネルギー問題を考える「環境政策」などの分野がある。近年、地域の特性を生かした産業育成や伝統文化の保護などの地方創生・地方再生といったテーマを扱う大学が増えている。

大学選び ココがポイント

 政治学は法学部や政治経済学部、政策学は政策学部、総合政策学部などのほか、政策系の学科をもつ大学でも学べる。大学によって得意分野が異なるので、どの大学でどの領域を専門的に学べるのか、大学案内などでよく調べておこう。



【経済学】

何を学ぶの?

●理論を理解し、経済現象を分析

 経済学というと、難しく感じる人もいるだろうが、実は私たちの生活にかかわる身近な学問だ。景気変動や物価の上昇など経済現象のメカニズムを分析し、その理論を実社会に役立てていくことが経済学には求められる。
 経済学では主に理論と応用方法を学ぶ。理論には、個人や個々の企業の経済活動を考えるミクロ経済学、日本やEUといった国や地域圏の景気動向などを分析するマクロ経済学がある。応用には、実社会の制度設計にも深くかかわっていく財政学、金融学、公共経済学や国家間の貿易を扱う国際経済学などがある。
 また、経済学には実際のデータに基づいた検証が欠かせない。さまざまな統計データを分析する手法も身につける必要がある。コンピュータを用いてシミュレーションを行い、経済動向を予測するため演習を設けている大学も多い。



【経営・商学】

何を学ぶの?

●組織のよりよい経営活動を考える

 経営学は企業や非営利団体など「組織」の経営活動を分析し、より望ましい成果を生み出す方策を検討する学問だ。
 経営管理論では、経営者や管理者の視点から目標達成のための効率的な組織や人材育成について考える。会計学では、主に企業の財務状態と利潤を巡る計算方法について学ぶ。急速なIT化に伴い、どのように情報を活用すれば効率的に組織の課題を解決できるかについて探究する経営情報学という学問も展開されている。
一方、商品の流通や消費という面から分析していくのが商学だ。消費者行動論では消費者がどう商品を選び購入するのかを分析し、マーケティング論では商品の販売や広告戦略を考える。
 このように経営・商学系は人・モノ・カネ・情報など経営活動に必要な資源を、組織としていかに管理・運用(マネジメント)すれば、商品やサービスといった価値を提供できるのかを学ぶ学問であり、実学的要素が強い。

似たもの比較 ~経済学と経営学~

 同じ「経済活動」という現象を扱う学問だが、経済学は社会全体の経済活動に問題意識をもって理論分析をするのに対し、経営学は組織のマネジメントや行動原理を研究する。単に分析するのではなく、いかに行動すべきかを問題とし、実践に応用するのが経営学の視点だ。
 理系の学問に例えると、経済学は自然界の法則性を探究する物理学に、経営学はその法則を踏まえながら、いかに人間に役立てるかという工学に似ている。



© 河合塾 全国進学情報センター 『2021 大学受験入門誌 栄冠めざして Junior』 2021年


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