いざ学問選択! 【4.自然の原理を探る】

いざ学問選択! 【4.自然の原理を探る】

【自然の原理を探る ―科学技術はすべて「自然の原理」をベースにしている―】

7世紀の科学者・ニュートンには数々の逸話が残されている。りんごの実が木から落ちるのを見て「万有引力の法則」を思いついたというのもその一つ。内容の真偽は定かではないが、りんごの実が落ちるのを見たニュートンは、月や惑星などにも相互に引き合う力(引力)が働いているのではないかと推測した。
 長い年月をかけて人間は自然の不思議に挑んできた。だが到達できていない謎もまだまだ多い。こうした謎の解明をめざし、自然界の法則性や根本原理を探究していくのが理学系の学問だ。理学の「理」は、「物事の筋道、条理、道理」という意味。自然界のあらゆる現象について、その理(ことわり)を追究していく。
 理学系の学問は、高校で学ぶ数学、物理、化学、生物、地学にほぼ対応している。工学に比べると実学的要素は薄いが、理学での基礎研究は科学技術の発展を支えている縁の下の力持ちといえる。理学系の学問には、どんなものがあるのかを見ていこう。



【数学】

何を学ぶの?

●長い歴史をもつすべての科学の「ことば」

 数学はすべての科学を表す「ことば」として古くから人間社会の営みにかかわってきた。自然科学の理論を根底で支え、さまざまな研究開発分野での基礎となっている学問だ。現代社会では欠かせないコンピュータも、数学の論理演算を応用したものだ。
 大学での数学は、理論を追究する「純粋数学」と、純粋数学の理論と手法を用いて理学、工学、経済学など他分野への応用をめざす「応用数学」に分かれている。純粋数学では数式や方程式について学ぶ代数学、図形や空間の性質を分析する幾何学、微積分を基礎とする解析学の3つの分野を学ぶ。
講義には演習が組み込まれ、実際の問題を解きながら数学的思考力を高めていく。また、コンピュータを用いて数学的な問題を解く方法を理解するため、コンピュータ実習や計算機演習などの授業もある。

大学選び ココがポイント

 数学系学科には、数学科や応用数学科、数理科学科などがある。数学科では純粋数学を中心に学び、応用数学科や数理科学科では各分野の基礎を学んだあと応用数学分野を広く学ぶ。
また、関連学科として、コンピュータの基礎理論や数理的手法により情報科学を学ぶ情報科学科、情報数理学科がある。工学部などの情報工学科と違い、ソフトウェアに重点が置かれているのが特徴だ。



【物理学】

何を学ぶの?

●自然科学の法則を探る

 物理学は、自然界で起きているさまざまな現象について普遍的な法則性を導き出す学問だ。宇宙のような無限の世界から、物質を構成する分子・原子・素粒子などミクロの世界までを扱う。
大学では、公式や法則そのものの成り立ちを考えることからスタートし、理論と実験の両面で検証して研究を深めることで、物理学的思考力を養っていく。
まずは現代物理学の基礎となる力学、電磁気学、熱力学、統計力学、量子力学などを実験や演習を交えてじっくり学ぶ。数学やコンピュータの知識も不可欠だ。学年が上がると、物質がもつ性質を分析する物性物理学、物質を構成する原子や素粒子を研究する原子・素粒子物理学など、それぞれの専門分野を学びながら、自分の研究テーマを決めていく。

大学選び ココがポイント

 物理系学科は、大きく物理学科と応用物理学科に分けられる。物理学科では純粋物理を学ぶのに対し、応用物理学科は物理学の理論を工学技術へ応用することをめざしているため工学系の科目が充実しているのが特徴だ。どちらもさまざまな研究分野があるため、自分が興味のあるテーマを学べるかどうかよく調べておこう。



【化学】

何を学ぶの?

●物質の性質・構造を実験で解明

 私たちの身の回りにはさまざまな物質が存在している。それらの物質がどんな性質・構造をもち、反応によりどのように変化するのかを実験や観察を通して明らかにするのが化学だ。
 大学ではまず、高校の理論化学をより深く学ぶ「物理化学」、有機・無機化合物の性質や反応を分析する「有機化学」「無機化学」といった基礎化学と、化学と密接な関係にある物理学、生物学、数学などを学ぶ。これらを土台に、化合物の合成や分離によって有用な物質を創製すべく研究を進めていく。
 また、理学部のなかでも実験の占める割合が高いため、研究スキルを身につける必要がある。高校時代の化学実験と異なり、自分で立てた仮説を証明するために実験を行うので、思い通りの成果が簡単に出るわけではない。逆に、実験の過程や結果からまったく別の問題を発見する場合もある。根気はいるがエキサイティングな学問でもある。

大学選び ココがポイント

 基礎化学を中心に学ぶ化学科、物質を総合的に研究する物質化学科などがある。多くは理学部で学べるが、化学を産業に応用する応用化学科、工業化学科など工学部に属する学科もある。自分にとって重点を置くのは何なのかを考えながら志望校を検討していこう。



【生物学】

何を学ぶの?

●生命の不思議を探究

 生物学は、細菌や微生物から植物、動物に至るまで、地球上のあらゆる生物を対象に、生命現象のメカニズムを解明する。動植物の生育と環境とのかかわりを研究する生態学、生物の形態や構造、発生について研究する形態学・発生学などのほか、分子や遺伝子レベルで生命をとらえる分子生物学、その手法を用いて遺伝現象を解明する遺伝学、生命現象を機能の側面から研究する生理学などの分野が発展している。ほかの学問分野と融合してクローン、再生医療なども扱う。
 大学では、まず化学と生物の基礎をじっくり学んだ後、自分の研究したい分野へ進んでいく。いずれの分野も、理論だけでなく観察や実験が研究の基本となるため、実験・実習が多く、野外調査や臨海実習をカリキュラムに組み込んでいる大学も多い。

大学選び ココがポイント

 理学部に設置されている生物学科、生物科学科が中心となる。研究テーマが広いため、自分が学びたい対象の研究が行われているかを大学案内などで確認しておこう。実験・実習の比率が高いので実験施設の充実度もチェックしておくとよい。
 また、大学院へ進学する人の割合が高いのも特徴。大学院設置の有無や進学率にも注意しておきたい。



【地球科学】

何を学ぶの?

●地球や惑星の謎に迫る

 地球はどんな物質で形成され、どんな構造をしているのか。身近なようで謎の多い地球に対し科学的に迫っていくのが地球科学だ。
 地球科学には、空や海など地球表層の環境や気候の変動を分析する大気水圏科学、地震や火山噴火など地球内部の構造や運動を研究する固体地球科学、生命の誕生・進化と地球環境との関係の解明に取り組む地球生命科学などさまざまな分野がある。最近では、地球史の解明とともに太陽系の他惑星などについても理解を深める地球惑星科学という分野もある。
 大学ではフィールドワークが重視され、現地に足を運び野外での地層観察や岩石・鉱物の採集を行う「巡検」と呼ばれる実習や、電子顕微鏡を用いた観察、実験やコンピュータを活用したデータ解析などのほか、海外での現地調査が行われることもある。

大学選び ココがポイント

 地球科学が学べるのは、国立大の理学部が多く、私立大では数大学しかないので注意しよう。宇宙・惑星を対象とする研究は、地球科学科よりも物理学科や天文学科のなかで専門的に扱っていることが多い。
 地球を対象とする学問だけにその研究対象も幅広く、学科名が同じでも大学ごとに重点を置いている分野もさまざま。自分の希望と各大学の研究テーマを照らし合わせて進路を決めることがポイントだ。



© 河合塾 全国進学情報センター 『2021 大学受験入門誌 栄冠めざして Junior』 2021年


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