いざ学問選択! 【8.よりよい暮らしへ】

いざ学問選択! 【8.よりよい暮らしへ】

【よりよい暮らしへ ―快適で質の高い生活を創造する―

「いまの生活をより豊かに、より快適にしたい」―そんな願いを実現するために、生活の中心となる「衣・食・住」を科学的に学んでいくのがこの系統だ。
 以前は研究の多くが家庭生活を対象としており、「家政学」と呼ばれるのが一般的だったが、最近は家庭にとどまらず社会問題にまで研究対象が拡大している。生活習慣病、地域社会の問題もその一例だ。また、ガス給湯器などの製品の事故、インターネット通販に伴うトラブル、食品の偽装表示事件といった、私たちの暮らしに身近な消費者問題についても対応が求められている。
 そのため、人の生活全般をカバーするという意味で「生活科学」「生活環境」「ライフデザイン」などの名称で呼ぶ大学も増え、「家政学」という名称は徐々に減ってきている。さまざまな問題を抱えている現代の生活。安心安全で、質の高い生活を創造していくためにはどんな方法があるのか。そのヒントを与えてくれる家政・生活科学系の学問について見ていこう。



【被服学】

何を学ぶの?

●ファッションを総合的に科学する

 被服学は、衣服など「人が身につけるもの」について総合的に研究する。素材の開発から、洋服のデザイン・製造はもちろん、心理学や社会学に関連する研究もあり、その対象は幅広い。
 大学では、服飾デザインを中心とした色彩学やテキスタイルデザインのほか、服飾の歴史や文化、マーケティング、消費行動、素材の性質や化学的構造などを学ぶ。
 実習・実験も多く、実際に服をデザイン・制作する実習のほか、衣服の洗浄・漂白・染色に関する実験や繊維の識別・合成など化学的要素の強い実験も実施される。また、アパレル(衣服・既製服)のデザインや生産工程を効率化するためのコンピュータ活用技術を学ぶアパレルCAD演習なども開講されている。

大学選び ココがポイント

 被服学は、家政学部や生活科学部などにある被服学科や服飾美術学科、ファッション造形学科などで学べる。また、研究分野の拡大から、生活デザイン、生活環境、生活科学といった学科でも学ぶことができる。研究領域が広いので、自分の学びたい分野が設置されているか、大学案内などで確認しておこう。いずれも、将来アパレル関連に携わりたい人にふさわしい学問といえる。



【食物・栄養学】

何を学ぶの?

●食のスペシャリストをめざす

 生命と健康の基本となる食べ物。食物・栄養学では、栄養・食品・食文化の3分野を総合的に学習・研究する。体に必要な栄養素の働き、食品の生産・加工・貯蔵、食品の安全性や調理方法について学び、生活習慣病や肥満、貧血、骨粗しょう症といった食生活に関連した病気の予防や健康増進などを研究する。最近では、食品の化学組成の分析や栄養素の分子レベルでの機能解明が進み、化学系や生命科学系に近いアプローチとなっている。
 4年間を通して実習や実験が多いのも特徴。調理学実習をはじめ、栄養学実習や食品衛生学実験など、なかには長時間にわたる実験もあるようだ。

大学選び ココがポイント

  「栄養士」の資格はほとんどの食物・栄養学関連の学科で取得可能だ。一方で、「管理栄養士」は国家試験を受ける必要がある。その受験資格はすべての学科で取得できるわけではないので注意したい。



【住居学】

何を学ぶの?

●豊かな住生活の実現をめざして

 住む人の立場から見た快適な住空間を考え、実現していくのが住居学だ。子どもから高齢者までが安全で健康的に暮らせる、機能的な空間を創造していく。たとえば、バリアフリー住宅や狭い敷地でもくつろげる空間づくりなどがその対象だ。また、住居を取り巻く地域の文化や人間関係、都市の環境なども研究対象となる。
 大学ではまず住居学の基礎とともに設計や製図の方法を学び、その後コースや専攻に分かれて設計製図や材料実験、実測調査など専門性の高い実習・演習に取り組む。インテリアのデザイナーやコーディネーターをめざすならこの学問を学んでおこう。

大学選び ココがポイント

 住居学は家政学部、生活科学部などに設置されている住居学科や環境デザイン学科、生活環境学科などで学ぶことができる。これらの学科は専門分野ごとにコース、専攻を分けているところが多い。自分の学びたい分野のコースや専攻が設置されているか、大学案内などで確認しておこう。

似たもの比較 ~建築学と住居学~

 住居学科でも建築学科と同じように設計や構造力学など建築学の基礎を学べる大学が多い。建築学も住居学も建物を扱う点は同じだが、いったいどこが違うのだろうか?
 建築学が建物の構造や強度、建築材料などのハード面を重視するのに対し、住居学では健康的で豊かな生活を送る住環境の実現といったソフト面から建物を考える。そのため、住居学ではインテリアなどの内装も対象となっている。



【生活科学】

何を学ぶの?

●人々の暮らしを科学する

 生活科学は家庭生活や社会生活の向上を目的とする学問。学ぶ範囲は幅広く、被服学・食物学・住居学・児童学(→41ページ)といった従来の家政系の学問はもちろん、最近では心理学や教育学、法学、政治学、経済学、社会学、社会福祉学などの分野ともかかわりながら、学際的・総合的な側面を持つようになっている。たとえば、「介護」「不登校」「子育て支援」「食の安全」といった家族関係やジェンダーをめぐる問題、消費者問題など生活者・消費者の視点から追究する。

大学選び ココがポイント

 生活科学が扱う領域は広範囲にわたるため、実際に何をテーマにしているかは大学によって大きく異なる。自分が学びたいテーマがあるのか、大学案内やホームページと照らし合わせて調べておこう。なお、この系統の学部・学科は女子大に多く、男子が学ぶ場合には大学が限定されるので注意しよう。



© 河合塾 全国進学情報センター 『2021 大学受験入門誌 栄冠めざして Junior』 2021年


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