大学入試の現状

大学入試の現状

【大学入試の現状】

大学を取り巻く状況は近年大きく様変わりしています。少子化に伴う受験人口の減少によって「定員割れ」となる私立大も少なくありません。また、グローバル化や技術革新に伴う急速な社会の変化に対応できる人材育成をめざし、国は高校教育や大学教育だけでなく大学入試の抜本的な改革を進めています。
ここでは、入試の仕組みや概況をまとめるとともに、現代の大学事情や大学卒業後の進路について探ってみましょう。



受験人口の減少と大学数の増加

高校卒業者の大学への進学率は上昇を続け、2020年度には51.1%となり、高校生の2人に1人は大学へ進学しています。高校卒業後の進路として、大学への進学という選択が一般的な時代になりました。

 大学志願者数は、1990年代のピーク時には92万人を超えていました。その後、人口の減少に伴い志願者数は減少し、ここ10年ほどは65~68万人で推移。ピーク時から見ると3割近く減少しています。一方、受け入れる側の大学の数は増えています。現在、全国には800近い大学がありますが、この数は大学志願者数がピークだった1992年度に比べ、約1.5倍となっています。

 この結果、志願者のうち実際に入学できた者の割合を表す入学率は、大きく上昇し近年は90%前後で推移しています。大学を選り好みしなければ、大学に入学できる状況です。

 なお、受験人口は再び減少期に入っており、高校卒業者数は2020年度から2024年度にかけて10万人以上減少する見込みです。これに伴い、大学志願者数も減少することが予想され、今後は入試全体として競争緩和が期待できる状況です。

【表1】受験環境の変化.png



変わる大学入試

現在、文部科学省は、高校教育、大学教育、そしてそれをつなぐ大学入試の一体的な改革を進めています。

この背景には、先を見通すことが難しい現代社会では、自ら問題を発見し、他者と協力して解決していくための資質や能力を育てる教育が急務であるという考えがあります。変化する社会に対応できる能力の育成、評価ができるよう、高校教育、大学教育、大学入試を三位一体で改革しようとしているのです。


大学入試については、これまで以上に多面的・総合的に能力を評価する入試への転換が掲げられました。

具体的には、学力の3要素と呼ばれる「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」をバランスよく評価することが求められています。


その具体として挙げられるのが、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の導入です。
共通テストは、大学入試センター試験(以下、センター試験)に代わり、2021年度入試から始まった新しいテストです。

共通テストは、大学入学段階で求められる「思考力・判断力・表現力」を一層重視するという考えがベースにあります。解答方法はセンター試験同様、マーク式のみですが、作問の方向性や出題形式が見直されました。

問題作成の基本的な考え方として、「知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力、表現力を発揮して解くことが求められる問題を重視する」としています。問題の場面設定については、学習過程を意識した場面設定を重視するほか、高校で身につけた知識の理解や思考力が新たな場面で発揮できるかを問うため、資料等では教科書で扱われていないものも扱う場合があるとしています。
各大学が個別で課す試験についても、より多面的な選抜方法を行うことが求められています。教科試験が中心だった一般選抜では、主体性等を評価するため面接を導入したり、受験生自らが作成した志望理由書等を提出させたりする大学が増えています。一方、学校推薦型選抜(旧推薦入試)、総合型選抜(旧AO入試)では、学力の3要素をバランスよく評価するため、小論文やプレゼンテーション、共通テストなどを通じて、学力を問う試験を必須化する方針が示されました。


また、グローバル化が急速に進展するなか、英語のコミュニケーション能力を重視する観点から、大学入試においても4技能を評価しようとする動きが見られます。
これまでの大学入試ではリーディング(読む)が中心となっており、各大学の個別試験においてリスニング(聞く)やスピーキング(話す)の試験を実施する大学は限られていました。
そこで、すでに4技能評価を行っている民間の英語の資格・検定試験を活用する方向性が示されました。当初、大学入学共通テストの導入とあわせて、大学入試センターが民間の資格・検定試験の成績を管理するシステムが構築される予定でしたが、多くの課題が解決されていないという指摘を受けて、システムの導入は見送られました。

しかし、個々の大学では、出願資格や合否判定に資格・検定試験の結果を用いるケースが増加しています。



入試動向は社会情勢に左右

ここ数年の入試動向に触れておきましょう。
国公立大ではリーマンショック後の不況の時期、学費が安いこともあって志願者が増加しました。それ以降、安定した人気を示していましたが、受験人口減少の影響から2020・21年度入試では志願者数が大幅に減少しました。国公立大入試の中心となる一般選抜前期日程では、2021年度入試の志願者数が過去最少の数となりました。人気の高い国公立大ですが、今後は競争緩和が期待できる状況です。

私立大では、数年前までは都市部の私立大を中心に、入学者数の入学定員超過を是正するため合格者数を絞り込む動きがあり、全体的に難化傾向がみられました。しかし、こうした定員超過の是正は多くの大学が終えており、私立大入試も受験人口減少の影響を受けて易化傾向に転じています。2021年度入試では、受験人口減に加えて、コロナ禍の影響による受験生の地元志向もあり、都市部の人気私立大で志願者の大幅減少が目立ちました。

学部系統の人気も変化しています。大学生の就職状況が厳しいと、資格が取得可能な学部や大学での学びが仕事に直結するイメージが強い理系学部の人気が上昇する傾向があります。また、ここ数年はAIやIoTなどの発展を背景に情報系の学部の人気が高まりをみせています。


入試動向はその時々の社会情勢、特に経済状況や就職率などの影響を強く受けています。

また、個々の大学の志望動向は大学の入試方式や科目の変更によっても大きく変化します。進学情報誌や大学案内、インターネットなどを上手に利用して常に情報収集を心掛けたいものです。

【表2】志願者数の推移.png

© 河合塾 全国進学情報センター 『2021 親と子の大学受験情報誌 栄冠めざして Family』 2021年