【第8回】 数学で創造力を身に付けるには?

2022.1.26

【第8回】 数学で創造力を身に付けるには?

近年、STEAM教育という言葉に注目が集まっています。STEAM教育とは「科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)」の5つの領域を対象とした分野横断的な学びです。社会とテクノロジーの関係がますます密接になっていくこれからの時代、分野横断型の学びを身に付けることが求められています。しかし日本では、国際的にみてもこの中の「数学」に苦手意識をもつ子どもが非常に多く、小学生・中学生・高校生と年齢が上がるにつれてその割合が増加しています。高校の文理選択では、数学が苦手だから文系を選択したという方も多いのではないでしょうか。

これからの時代を生きる力を育むために、数学とどのように関わっていけばよいのか。

本シリーズでは子どもが数学を楽しく学べるようにするために、そして子どもたちの生きる力を育むために数学で何ができるのか、全8編の連載形式でお届けします。


西村先生.jpg東京学芸大学大学院 教育学研究科 教授 西村 圭一(にしむら けいいち)先生
東京都立高等学校、東京学芸大学附属大泉中学校、同国際中等教育学校教諭、国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部総括研究官、東京学芸大学教育学部数学科教育学分野教授を経て、現在に至る。日本数学教育学会業務執行理事、数学教育編集部長、学習指導要領等の改善に係る検討に必要な専門的作業等協力者(高等学校数学科、高等学校専門理数)、Bowland Japan代表、探究オリンピック-明日の思考力コンテスト-委員長、東京学芸大学SSH/WWL合同推進委員など多数。主な編著書に、『真の問題解決能力を育てる数学授業-資質・能力の育成を目指して』(明治図書,2016)などがある。



数学が苦手な子どもが増えている!?子どもが興味をもつ多様な数学教育とは。

数学で創造力を身に付けるには?



■創造して構造を見つけることが重要

今まで数学がちょっと苦手な子どもにフォーカスしてきました。一方で、数学が好きな子たちも当然いらっしゃるので、その子たちがさらに数学の世界を深めるためにご家庭で支援できることはありますか。

前回ご紹介したツールは、数学が得意な子どもにも適しています。GeoGebraでは図形でも同じようなことができます。直感を働かせて、グラフや図形を動かしてみて「これはどうかな?」と試してみると新たな性質を見つけられますし、それを証明してみたりすることで数学の力が伸びると思いますよ。創造して構造を見つけていくという意味では、今のような話で自分でやって見つけるということが大事です。


数学で「創造力」を身に付けるには?

数学においても創造性を働かせて、問を立てて検証していくことが大切ということですね。ただ、子どもたちを見ていると創造性が低い子どもも多いと思っています。数学で創造性を伸ばすとなると、先ほどのツールのようなお話もあるかと思いますが、ほかにどのような方法があるのでしょうか。

数学で身につく創造性って、やっぱり数学の創造性だと思うんです。「こういう場合はどうなんだろう?」と常に問いを持つことを大事にしていくことがいいと思います。

一方で、数学を離れた創造性、つまり本当に新しいイノベーションを起こすようなものを創造し、それでかつ数学を生かせるようなことというのは数学の世界に閉じこもっているだけではなかなか生まれてきません。いま、大学等では分野横断型の研究もありますよね。分野横断で議論ができ、一緒に何かを作り上げるとことは,大学生になって突然やってもできるようにならない人のほうが多いように思います。だから、高校生ぐらいからそういうことを経験していく「仕掛け」を作っていきたいと思っています。

ご家庭では,小さいうちから,子どもに問いを持たせる経験や機会をつくっていけるといいですね。