【第12回】3分で読める実践型学習理論コラム! ー教え込むよりちょっと考えさせるのがいい、は本当みたいー

【第12回】3分で読める実践型学習理論コラム! ー教え込むよりちょっと考えさせるのがいい、は本当みたいー

【第12回:教え込むよりちょっと考えさせるのがいい、は本当みたい】

「新しい学力観」が提唱されてから早30年。指導要録は観点別となり、生徒の学ぶ「意欲」・「関心」の評価が重要視されるようになりました。これに合わせて、子どもの学ぶ「意欲」・「関心」という「見えない学力」、つまり定量化することが困難な非認知能力が注目されてきています。「生きる力」とも言われる非認知能力をご家庭でどのように伸ばし、未来を生き抜く力を身に付けることができるのか。

日本人として初めてグローバル・ティーチャー賞に選出された神田外国語大学の高橋先生のコラムを全13編の連載形式でお届けします。

高橋先生.jpg神田外語大学 言語メディア教育研究センター 客員講師 高橋 一也(たかはし かずや)先生 
慶應義塾大学大学院、米・ジョージア大学大学院でインストラクショナルデザインを研究(全米優等生協会選出)、蘭・ユトレヒト大学大学院で認知心理学を学ぶ。2008年より都内の私立学校の英語教諭として勤務し、2016年度より中学教頭を務める。2016年には日本人として初めてグローバル・ティーチャー賞の最終候補に選出される。現在、日本全国の学校で授業力向上の支援にも力を入れている。

 

以前、打ちあわせで中目黒にあるレッジョエミリアの学校を運営する方とお話しする機会がありました。

会話の中で、お互い「そーだよね」と一致したところが

子どもとの会話をどうしていいのか分からない

という保護者の方が意外と多い、ということ。

冬休み、子どもと時間を過ごす機会が増えてくると思いますので、ちょっとした対話のヒントを共有させてください。



こどものギモンを受け止めてみよう

なんで鳥さんは飛べるの?

とか

なぜ?

と聞かれたら秒速で答えたくなってしまうのが、大人の常。

親であれ、先生であれ、会社の先輩であれ、いちいろと教えたくなってしますよね。

しかし、心理学の研究では子どもたち(注:子どもに限ったことではなく、実は大人も」)も「自分なりの考え」を持っているために、なかなか新しい知識が入ってこないという現象があります。

【第6回】子どもはなぜ思いのほか頑固なのか 【第6回】子どもはなぜ思いのほか頑固なのか


これが素朴理論と呼ばれるものです。もともとは1990年代に社会心理学者のLee Rossらが名付けたといわれています。

例えば、物理学で揚力の話とか知らない子供たちに、

なぜ鳥は飛べるのかな

と聞いたりすると、

骨が軽いから

とか答えるでしょう。

【実際に鳥が飛ぶ原理はこちら

このように「鳥が飛ぶ」という摩訶不思議な現象を子供たちは彼らなりの理論で理解しようとしているのです。

子どもは生まれながらにして「科学者」なんです。

↑で紹介しているリンクには「月の満ち欠け」の話がありますので、ぜひご参考にしてください。



支える対話を大切にしよう

科学教育で有名な大塚先生は、1977年(今から約40年ほど前!)に

知識の伝達から支援の教育

というのを主張していました。

子どもの持っている素朴理論を大切にしながら、次の様な手順で教え導くといいと言われています。

1 子どもが持っている「自分の考え」聞きだそう

学校や研修だったらポスター説明文を書いてもらうのもありですね。

2 子どもが持っている「自分の考え」を揺さぶろう

専門用語では「概念の衝突」と呼ばれている過程です。専門家が話しているyoutube動画などを一緒に見よう。もちろん本でも良いですよ!子どもがわかりやすく解説してあげるのもいいですね。

3 子どもが持っている「考え」と比較してみよう

子供たちが持っている考えと専門家の人の話を比べて何が違っているのかを話してみる。

実はこの「差」こそが意図的に・集中的に学ぶべきことだったりします。つまり、学ぶべき内容や方向性が明らかになるんですね。分からないことが出てきたらこっちのものです。

なんでなんだろうね

というキラー質問でどんどん深掘りしましょう。

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冒頭の大塚先生がもっとも重要視していたのがここ、「概念変容」、つまり「考え方の変化」なんです。

子どもたちが持っている独自の考え方が、専門家の説明を聞いて揺さぶられ、そして修正される、このプロセスが重要なんです。

大人からの説明をただ聞くだけではあまり効果がないのです。自分の理論と専門家の理論の差に気づき、自分の考え方を直していくというのが「学び」なんですね。

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まとめ

子どもとの会話で困ったら

1 まず子どもの理論を聞いてみよう
2 一緒に専門家の話を聞いてみよう
3 子どもが自分の考えを振り返るファシリをしてみよう

という手順が良いみたいです。

これは「素朴理論を用いた学び」と言われる手法で、心理学では良く実験研究されている方法です。
ぜひ、冬休みにやってみてください。

例えば、有名な理科の小ネタでは
「質 量 が 異 な る 2 つの 物 体 は 、 同じ 高 さ か ら 同 時 に 手 を 離 せ ば 同 時 に 着 地 する 」というものがあります。
テレビや本など、いろいろなところで紹介されているので、どこかで聞いたことがあると思います。

でもしかし、ふいに聞かれたりすると「重い方が先に落ちる・・・」と喉まで出かかってしまいますよね。
(実は、物理学の博士号を持っている人でもアタマのどこかに素朴理論がのこっているという研究報告があるんです!)

ガリレオがピサの斜塔からモノを落として実験したように、ぜひご家庭でも実験してみて下さい。そして、インターネットやYouTubeで解説を見てみましょう!

ものが「落ちる速さ」に「質量(ものの重さ)」が関係していないという衝撃に事実が・・・

© 2021 Kazuya Takahashi   
出典:高橋一也 「3分で読める実践型学習理論コラム!」 https://note.com/playfulquest/n/n141014743715 2021年

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