【第6回】3分で読める実践型学習理論コラム! ー子どもはなぜ思いのほか頑固なのかー

【第6回】3分で読める実践型学習理論コラム! ー子どもはなぜ思いのほか頑固なのかー

【第6回:子どもはなぜ思いのほか頑固なのか】

「新しい学力観」が提唱されてから早30年。指導要録は観点別となり、生徒の学ぶ「意欲」・「関心」の評価が重要視されるようになりました。これに合わせて、子どもの学ぶ「意欲」・「関心」という「見えない学力」、つまり定量化することが困難な非認知能力が注目されてきています。「生きる力」とも言われる非認知能力をご家庭でどのように伸ばし、未来を生き抜く力を身に付けることができるのか。

日本人として初めてグローバル・ティーチャー賞に選出された神田外国語大学の高橋先生のコラムを全13編の連載形式でお届けします。

高橋先生.jpg神田外語大学 言語メディア教育研究センター 客員講師 高橋 一也(たかはし かずや)先生 
慶應義塾大学大学院、米・ジョージア大学大学院でインストラクショナルデザインを研究(全米優等生協会選出)、蘭・ユトレヒト大学大学院で認知心理学を学ぶ。2008年より都内の私立学校の英語教諭として勤務し、2016年度より中学教頭を務める。2016年には日本人として初めてグローバル・ティーチャー賞の最終候補に選出される。現在、日本全国の学校で授業力向上の支援にも力を入れている。

 

1971年、スポ根アニメの金字塔「巨人の星」の星飛雄馬からバトンを引き継いだのは同じく日本を代表するギャグマンガ「天才バカボン」のパパだった。

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そのギャグアニメのオープニングソングは

西から昇った おひさまが 東へ沈む 「あっ・たいへん!」
これでいいのだ これでいいのだ
ボンボン バカボン バカボンボン
天才一家だ バカボンボン
(歌詞:東京ムービー企画)

という、これまた日本全国の善良な小学生を混乱の渦に陥れるものだった。当社の調べによると、土曜日夜にこの歌詞を聞いてしまったがため、翌週月曜日の理科の点数は記録的に悪かったそうだ。

という前置きはさておき、実は子供たちはバカボンの歌を聴かなくても(全国の保護者の方、ご安心ください!)太陽が東へ沈む(かも)という考えをもつことがあるのです。

大人(知っている人)の視点からは一見変に思えるような理論を子供はかたくなに持っていたりしませんか?

そうなんです、実は、子どもたちは普段から身の回りを観察し、自分なりの考えを作り上げていることが分かっています。これを認知科学の世界では「素朴理論」(naivebeliefs)と呼んでいます。

月の形はなぜかわるのか?

質問: 月の形が毎日変わるのはどうしてですか?

  1. いろいろな形の月があるから
  2. 月が地球のかげに入るから
  3. 地球から見て、太陽と月の位置関係が変わるから
  4. わからない

このような一連の天文に関するアンケートが今から20年ほど前に全国の小学生4-6年生を対象に実施されました。

この結果を当時の天文学会で発表され、「理科教育崩壊」というこれまたPVをガツンと稼げそうなタイトルで話題を呼びました。事実、この学会の後に文科省まで声明を出すほど話題となったのです・・・覚えていますか?

詳しいデータは省きますが、例えば上の「月の満ち欠け」について学校で習っていない小学生4年生の成績は特に悪かったそうです。蛇足ですが、

天動説復活(か)?の結果もあります。

 

実は子どもだけでは・・

実は、小さい子どもだけに限ったことではないのです。

例えば、今となっては古典となってしまいましたが、今から40年ほど前にこの素朴理論について実験をしたマッククロスキー教授(まっ黒くろすけではなく)の実験をご紹介します。

いろいろな実験をしているのですが、特に物理の教科書などで活用されるのがこちら。ボールがころころと動き、崖から落ちるときどのような軌道をたどるのかというものです。

大学生を対象にした実験だったのですが、なんと高校で物理を履修した大学生でさえ間違った力学の理解をしていたよ
うです。答えは左です。私は結構怪しかったですが、正解しました(汗)。

人は誰でも知らないことが多くあります。そして実験でも明らかなように、誰でも

<自分なりの理論> すなわち <思い込み>

を持っているのです。

間違った知識は恥ずかしいことではない

子どもや大学生を対象にした素朴理論の実験は数多く行われ、今となっては

素朴理論を上手く活用した探究

が効果的な教え方であるという報告もなされています。

『授業を変える: 認知心理学のさらなる挑戦』米国学術研究推進会議, 2002, 北大路書房 『授業を変える: 認知心理学のさらなる挑戦』
  米国学術研究推進会議, 2002, 北大路書房
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間違った考えを持つのは恥ずかしいことではありません。むしろ、学びのチャンスなのです。

教える人は、やさしく間違いを指摘してあげてください。その「指摘」が後の学びの土台となるのです。

子どもだけでなく、私たち大人も小さな科学者なのです。

—学びヒント
☆ たくさん失敗しよう

☆「なぜ」と質問しよう

—参考
McCloskey, M. (1983). Naive theories of motion.

© 2021 Kazuya Takahashi   
出典:高橋一也 「3分で読める実践型学習理論コラム!」 https://note.com/playfulquest/n/n7a79361ef28f 2021年

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